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吉田の呼ぶ声に、はっと我に返ったように輝幸は
屈託のない少年のような笑顔を返した。

・・・・そして・・・・・

何と言うことであろう!!

キングを、ボートに引き上げてライブウェルに・・・・
どころか、ゆっくりと・・・・優しく湖面に持ちあげた手を戻し
その手を放した・・・・。

キングは一瞬湖面に漂い、そしてほかのバスをリリースした時の
ように、逃げるように水中に消えていくのではなく
少しの間、別れを惜しむかのようにさえ見えるほど
ゆっくりと、堂々と水中深くに消えて行った・・・・

それを見た吉田は、それこそ飛び込んで捕まえてくるといった
勢いで、狂ったように叫んだ!

「何するんだ!藤野っ!
 チャンピオンバスだぞっ!
 このトーナメントナンバーワンになれる、ウィニングバスじゃないか!
 気でも違ったのか!」

それを遮るように、輝幸は優しく・・・しかし圧倒的な威厳を持って言った・・。

「いいんだ・・・・これでいいんだよ・・吉田。」


2008年9月27日(土)

NO-FISH・過去記事
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