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さざ波にほんの一瞬漂った次の瞬間・・・
小さな金色の物体は、輝幸の手によって
一匹のベイトフィッシュ(小魚)となって水中に消えていった。

このポイントは、水深4・2mののラインがずっと続く
平坦で、障害物らしきものは何もない平坦な所である。
魚群探知機を駆使しても、普通のバスプロならなんのためらいもなく
通過してしまうような、なにもないところ・・・
輝幸の最新型水温検出器がなければ、なにひとつ魅力のないポイントだった。

今、輝幸のDB-?はハイスピードリーリングによって
一気に水深3mまで潜り、水平航行の体制に入った。
(すなわち湖底から1・2mのサスペンドとなる)

・・・・・と、その瞬間・・・・
コン・・・・・ココン・・・
と、ほんの小さな抵抗をロッドの先端に感じ取った輝幸は
水面ギリギリにあったロッドティップを一気に頭上高く跳ね上げた!!

「ビンゴッ!」

輝幸が叫ぶと同時にロッドがその真ん中辺りから大きくしなった・・・。
ギリギリとドラグが悲鳴を上げる。

「どうだい!まぐれなんかじゃないぜ!」

輝幸は、ハンドルをこじ回しながらプレスにではなく
ラインの先にかかっているバスに語りかけるように叫んだ。

ラインは、最も信頼するソラローム ウルトラの14ポンド。
一投目からのヒットであるから、ラインに傷が付いている心配もない。

輝幸は力一杯ハンドルをこじ回した。
この重い引きは、確実に2kgをオーバーするランカーのものであるにもかかわらず
ドラグを緩めて慎重に寄せてくる・・といった感じは一切ない。
なんという大胆なランディングであろうか・・・。
時折見せるランカーバスの力一杯の抵抗も、
あっさりとそのロッドさばきのみでかわしてしまっている。
ラインは17m・・・15m・・・・13m・・・とどんどん巻き取られていく。

普通のバスプロならば、20ポンドラインを使っていてもこんな取り込みは
絶対にしない。
トーナメントにおける50cmオーバーのランカーバスは
絶対的有利なファクターであることは言うまでもない。
慎重に慎重を重ねて取り込むのは常識である・・・。

が、輝幸にとっては慎重という言葉は全く無縁であるかのようであった。

この大胆不敵なランディングは以前から定評のあったものであるが
今日の輝幸はいつにもまして大胆で、凄味すら感じさせるものがあった。


2008年5月31日(土)

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