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気付いてみると、ラインはほとんど巻き取られ
あと10数メートルを残すのみとなった。
奴は、ほぼボートの真下まで寄ってきていた。

しかし、ここで油断して泣いたバサーが何人いるだろう・・・

まだまだ奴は、力を残しているはずだ。
虎視眈眈とチャンスを狙っているはずだ。
少しでも気を抜けば、ぶっつりとやられるに違いない。

輝幸にとっても、奴にとっても一番辛い時間である。

しばらくの間、巻きもしない・・・引かれもしない時間が続く。
同船の吉田も、じっと息をこらして見つめるのみであった。

だが・・・只ロッドを持って耐えているだけではなかった・・・
色々な思い、駆け引きが一本のラインを通して
輝幸と奴の間で、激しく行き来していた。

その、緊張極まりない沈黙を突然破ったのは
やはり奴の方であった。

奴は、ボートの真下をくぐり反対側へ走り出したのである!
なんという頭の切れる奴であろうか!
ラインをボートに引っかけて切るつもりだ。


2008年9月22日(月)

NO-FISH・過去記事
連載小説 ”NO-FISH”1:第一章 プロローグ2:3:第二章 デビュー4:5:6:7:8:9:10:11:12:13:14:15:第三章 ミラクルバシング16:17:第四章 ライトゲーム18:19:20:21:22:23:24:25:26:27:28:29:30:31:第五章 ハイテク バシング32:33:34:35:36:第六章 リトルアングラー37:38:39:第七章 老人40:41:42:43:第八章 迷い・・・・44:45:46:47:48:49:50:51:第九章 フロック?52:53:54:55:56:57:58:59:60:61:62:63:64:65:第十章 最後の決戦66:67:68:69:十章 第二節 プレッシャー70:71:72:73:74:75:76:77:78:79:80:81:十章 第三節 懐かしいパワー82:83:84:85:十章 第四節 スーパーランカー86:87:88:89:90:91:92:93:94:95:最終章 ノーフィッシュ96:97:98:最終話99:あとがきNO-FISH