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まだ九月に入ったばかりとはいえ、顔に当たる時速100km/hの空気は
刺す様に冷たい。
相変わらず鋭く湖面を切り裂くスキーターのコクピットでハンドルを切りながら輝幸は
ある老釣り師に言われた言葉を、心のどこかで想い出していた・・・。

「お前の眼に映っているのは、魚じゃない。
 その魚探のスクリーンだけさ。
 本当のお前を見つめなおすことだ・・・。
 そうすれば、今まで見えなかった物事が見えてくるようになる・・・。」

ここ一週間というもの、輝幸の頭からはこの老釣り師の言葉が離れない。

「ふん!あんな爺に何がわかる!」

老釣り師の言葉を振り払うように輝幸は
スキーターのアクセルギアをMAXまで絞り込んだ。

やがて彼のスキーターは、その最高速度である120km/hに達した。

そして、あっという間に朝もやの彼方へと消えていった。

跡には相変わらず冷たい空気と、一筋の切り傷を負った湖面が残るだけであった。


2008年5月22日(木)

NO-FISH・過去記事
連載小説 ”NO-FISH”1:第一章 プロローグ2:3:第二章 デビュー4:5:6:7:8:9:10:11:12:13:14:15:第三章 ミラクルバシング16:17:第四章 ライトゲーム18:19:20:21:22:23:24:25:26:27:28:29:30:31:第五章 ハイテク バシング32:33:34:35:36:第六章 リトルアングラー37:38:39:第七章 老人40:41:42:43:第八章 迷い・・・・44:45:46:47:48:49:50:51:第九章 フロック?52:53:54:55:56:57:58:59:60:61:62:63:64:65:第十章 最後の決戦66:67:68:69:十章 第二節 プレッシャー70:71:72:73:74:75:76:77:78:79:80:81:十章 第三節 懐かしいパワー82:83:84:85:十章 第四節 スーパーランカー86:87:88:89:90:91:92:93:94:95:最終章 ノーフィッシュ96:97:98:最終話99:あとがきNO-FISH